預貯金の記録方法【家計簿記各論A-02】

預貯金の記録方法 個別の処理方法

お世話になっております。翔兵衛です。

預貯金は現金と並び非常に重要な資産です。
取引の回数も多くなるため、記録の方針が揺らいだままだと家計の把握に有用な情報を得ることができなくなってしまいます。
このページを参考にして、ブレのない方針の確立に努めてください。

預貯金の範囲

家計簿記において預貯金とは、金融機関に対して預けた金銭でその引き出しや振替などの利用に制限がないもの、つまり「普通預金口座」「普通貯金口座」に預け入れられた金銭が該当します。
なお、外貨預金であっても普通預金と同等に扱うことができるものは預貯金に含まれます。

次のものは預貯金ではなく、それぞれの科目に該当することとなります。

  • 定期預金、積立預金(それぞれ外貨によるものを含む) → 定期預金(短期運用資産)
  • 証券会社に開設した口座内の金銭 → 有価証券等(短期運用資産)
  • 金融機関以外に預けた金銭
    • 利用に制限がない → 短期貸付金(短期運用資産)
    • 利用に制限がある → 長期貸付金(長期運用資産)

記録の方法

増減があった場合

金銭が振り込まれたことにより口座残高が増加した場合、または引き落とし等により口座残高が減少した場合には、現金等により支払いを受けまたは支払いをした場合と同様に記録します。

  1. 預金口座に給与100,000円が振り込まれた。
  2. 電気代5,000円の引き落としがあった。
摘要預金(収支)
1給与100,000100,000
2電気代5,0005,000

利息を受け取った場合

金融機関から利子を受け取った場合には、手取額をもって収入金額とします。

預貯金に対する利子には20%(2037年までは20.315%)の所得税が課され、本来の利子の金額からその所得税額分が差し引かれた金額を受け取ることとなります。
厳密に記録する場合にはこれらを考慮すべきですが、一般的に個人が受け取る利子の金額はごく少額であるため、記録の簡便性を優先して手取額による記録としています。

  1. 金融機関から預金に対する利子として23円を受け取った。
摘要預金(収支)
1利子収入2525
(参考:所得税を考慮する場合)
1利子収入3030
1利子源泉税55

信用金庫等の出資金・配当金

信用金庫等で口座を開設する場合には出資金として一定の金額を差し入れる必要があります。
このような出資金は値動き等による利益の獲得を目的としたものではなく、あくまでその信用金庫等を利用する権利を取得するためのものであると考えられるため、権利金等(その他固定資産)として計上します。

また決算時など一定期間ごとにその出資の金額に応じて配当金が支払われますが、こちらについてはその信用金庫等の利益処分であるため、株式に係る配当金と同様に配当収入として手取り額により記録します。

  1. 信用金庫に出資金50,000円を差し入れ口座を開設した。
  2. 信用金庫より配当金として239円を受け取った。
摘要現金その他固定
1出資金50,00050,000
摘要預貯金(収支)
2配当金239239

外貨預金の取扱い

外貨預金口座に円貨を入金した場合

外貨預金口座に金銭を預け入れた場合には、その預け入れた円貨での価額をもって振替えます。

  1. 外貨預金口座(米ドル)に500,000円を預け入れた。
  2. 外貨預金口座(中国元)に250,000円を預け入れた。
摘要預貯金外貨預金
1外貨預金500,000500,000
2外貨預金250,000250,000

利息を受け取った場合

利息を受け取ったときは、実際に受け取った利息額を円貨に換算した金額により記録します。
なおこのときの為替レートは、その利息を受け取った日の終値(その日に終値がないときは、前日以前の一番最近の終値)により換算します。(円未満の端数が生じたときは切捨。以下同じ)

  1. 外貨預金に対する利息として、1.5米ドルを受け取った。
    (その日の終値:156円/米ドル)
摘要外貨預金(収支)
1利子収入234234

外貨預金口座から引き出した場合

外貨預金口座から引出した場合には、次の方法のどちらかの方法により計算した金額を振替えます。
なお同一年中の取引についてはすべて同じ方法により記録するようにしてください。

原則法

外貨預金口座から引き出すたびに、以下の計算式により元本相当額と為替差損益等相当額とを計算して記録する方法です。

引出しにより受け取った円貨が金融機関の計算によるその外貨預金残高のうちどの程度の割合を占めていたのかを求め、それと同じ割合の金額を帳簿価額から減額します。

外貨預金を引き出す場合の算式
  1. 為替差益が生じる場合
    外貨預金口座(米ドル)の一部を引出し、200,000円が入金された。
    なお引出し直前の外貨預金口座残高は503,200円、財産シートの外貨預金勘定(米ドル)の帳簿価額は500,000円であった。
  2. 為替差損が生じる場合
    外貨預金口座(米ドル)の一部を引出し、150,000円が入金された。
    なお引出し直前の外貨預金口座残高は489,500円、財産シートの外貨預金勘定(米ドル)の帳簿価額は500,000円であった。
摘要預貯金外貨預金
1引出し198,728198,728
摘要預貯金(収支)
1為替差益1,2721,272
※1:200,000 ÷ 503,200 = 39.745…%
   500,000 × 39.745…% = 198,728
摘要預貯金外貨預金
2引出し153,217153,217
摘要預貯金(収支)
2為替差損3,2173,217
※2:150,000 ÷ 489,500 = 30.643…%
   500,000 × 30.643…% = 153,217
繰延法

外貨預金から引出した時点では為替損益を計算記録せず、決算時または全額引出しの際にまとめて損益を計上する方法です。

為替損益の計算は決算時等にまとめて行うため、引出した時点では実際に入金された金額の振替のみを記録します。

  1. 外貨預金口座(米ドル)の一部を引出し、200,000円が入金された。
    なお引出し直前の外貨預金口座残高は503,200円、財産シートの外貨預金勘定(米ドル)の帳簿価額は500,000円であった。
  2. 外貨預金口座(米ドル)の一部を引出し、150,000円が入金された。
    なお引出し直前の外貨預金口座残高は489,500円、財産シートの外貨預金勘定(米ドル)の帳簿価額は500,000円であった。
摘要預貯金外貨預金
1引出し200,000200,000
摘要預貯金外貨預金
2引出し150,000150,000

外貨の振替を行った場合

外貨預金を別の通貨の外貨預金に振替えた場合には、その調整のための記録は行わずにそれまでの帳簿価額を引き継がせます。

  1. 外貨預金口座(米ドル)の全額を外貨預金口座(英ポンド)に振替えた。
  2. 外貨預金口座(スイスフラン)のうち200,000円を外貨預金口座(豪ドル)に振替えた。
摘要預貯金外貨預金
1(記録なし)
摘要預貯金外貨預金
2(記録なし)

決算時の評価

決算を迎えた場合には、その時点での為替差損益を計算し外貨預金勘定の金額を修正します。

  • 円換算額が示されている場合
    財産シートの外貨預金勘定の金額をその円換算額に修正し、これによる増加分または減少分を為替差損益として記録します。
  • 円換算額が示されていない場合
    財産シートの外貨預金勘定の金額を、外貨預金残高を決算日の終値等により換算した金額に修正し、これによる増加分または減少分を為替差損益として記録します。
  1. 決算日における外貨預金に係る情報は次のとおりである。
    財産シートの外貨預金勘定 :500,000円
    金融機関が示す外貨預金残高:503,082円
  2. 決算日における外貨預金に係る情報は次のとおりである。
    財産シートの外貨預金勘定 :300,000円
    金融機関が示す外貨預金残高:2966.73豪ドル
    決算日における為替レート :99.59円/豪ドル
摘要外貨預金(収支)
1為替差益3,0823,082
2為替差損4,5434,543
※1:300,000 – 2,966.73 × 99.59 = 4,543.3593 → 4,543 (円未満切捨)
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